今日の一枚 裏打ちを剥がす
涅槃図の掛軸の修復のため、裏打ち紙を剥がしているところです。
裏打ちというのは実は1回とは限りません。
作品に直に裏打ちすることを肌裏、さらにその上に裏打ちすることを増し裏といい、
掛軸などはさらに仕上げの総裏など、何枚も裏打ちされていたりします。
その中でも、作品に直に糊づけされている肌裏を剥がすのは大変リスキーです。
古物の場合は特に、一見しっかりしているように見えて、実は作品に相当な傷みがきている場合もあり、裏打ち紙にくっついていることでかろうじて保たれていたりします。
そのような中で肌裏を剥がそうとしますと、作品が肌裏にくっついてきて、作品の一部分が欠損したりします。
細心の注意を払いながら剥がねばなりませんが、100%回避することは不可能です。
そもそもなぜ裏打ち紙を剥がすのかと申しますと、その理由は色々とあるのですが、
- 経年劣化で糊がきかなくなり浮いてるところが多数あると、そのまま仕立て直しても浮いたところは浮いたままになってしまう。
- 染み抜きをする場合には、薬品が作品に浸透できるように何枚もある裏打ち紙を剥がして薄くする必要がある。
というようことが主な理由です。
経年劣化が激しいものは、作品も肌裏も「泥」になりかけのような状態の場合もあります。
このようなことから肌裏まで剥ぐのはリスキーなため、状態を見て、肌裏まで剥がなくてもよい場合は増し裏までを剥ぎます。
古物の修復・仕立て直しではほぼ間違いなく裏打ち紙をはがさねばなりませんが、見極めに熟練を要します。